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「トキカケ!」  みっちゃん様 執筆作品

「え〜っと・・」
 亜依が、辞書と本片手にぶつぶつ言う。
「何ぶつぶつ言ってんのよ」
 それを見た圭織が声を掛けた。
「勉強してるんだべ。ね、加護」
「飯田さぁん、安倍さぁん、この字、読めますぅ?」
 そう言って差し出した本のタイトルは・・。
「『伊豆の踊り子』?・・・・加護ぉ・・」
 数回目をぱちくりさせた後、目線を亜依の方に向けた。
「はい?」
「うちらがやるの、『時をかける少女』だっしょ。何でこれなの?」
 圭織が本を見ながら尋ねる。
「えぇ〜、だって気になるじゃないでぃすかぁ。ごとーさんとかののちゃんとかおばちゃんとか・・・どんなんすんのかな〜って・・」
 眉を八の字に曲げて、汗を掻きながら困った顔をする。一瞬、関西弁が顔を出した。
「他にも、『はいからさんが通る』ってゆーのも有りますでぃすよぉ♪」
「それはそれでいいけど、自分の方はどうなったんだべか?」
「え゛・・・・・えっとぉ〜・・」
 なつみに聞かれて返答に窮したらしい。その顔のまま固まってしまった。
「・・・加護」
「ひゃ、ひゃい」
 圭織の呼びかけに、肩をビクッと震わせた。
「実はさ、うちもまだなんだ。だから一緒に読もう、台本」
 圭織の顔が、フッと柔らかい表情になる。
 怒られると思った亜依は、つられて笑顔になった。
「じゃあ、私も入れて」
「え?いいけど・・・どして?」
 首を傾げる二人の間に、なつみが割って入った。
「何でって・・・・べ、別にいいじゃん、そんなの」
「あ、解った!!」
 急に叫んだ亜依に、二人はびっくりして一歩引いた。
「な、何が解ったの?」
「安倍さんもまだなんでぃすかぁ?」
 圭織が、そうなの?という視線をなつみに向ける。
「いや、台詞は大体覚えたんだけどさぁ、一緒に相手役になってくれる人とか時間とか、あんまし無くてさ・・」
「なぁんだ。そいじゃあ、一緒にやるべさ。ね、加護」
「はいでぃす。一緒に練習しましょう♪」
 聞いた途端になつみはニパッと笑った。
「ほいじゃあ・・・・ここら辺からやるべか」
「ほいほい」
 楽屋に、朗読する三人の声が響く。内心ホッとしたなつみであった・・。

「トキカケ!」(完)

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 2002年1月15日から、のべ人の方に閲覧していただきました。ありがとうございます。

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