「いつの間にやら……三人三様」 みっちゃん様執筆作品
「紗耶香ぁ〜〜」
矢口が、廊下に立っていたあいつを呼び止めた。
「ほーら、圭ちゃんもさぁ、早くぅ〜」
「はいはいったくもぉ・・」
矢口、腕痛いってばさ。はいはい、解った解った。もう、相変わらずテンション高いんだから。
「おぉ〜〜、真里っぺに圭ちゃんじゃないですかぁ」
「さ〜〜やか〜〜〜〜〜〜〜!!」
「って、うわぁ〜〜〜!!?」
あっちゃぁ〜〜〜。紗耶香、尻餅突いちゃったよ。全く、矢口もやってくれるね。
「ほら、二人とも!立って」
「てへへ。圭ちゃんあんがと・・」
「もぅ、真里っぺってば、かなり痛かったんだからね」
「ゃ、だから謝ってるじゃんよぉ、紗耶香ぁ〜」
相変わらず、矢口は紗耶香に謝ってる。以前とおんなじだよ。ははは・・。
「久し振りだね、圭ちゃん。って、この前、仕事で会ったばっかか」
「あはは、そうだね。ず〜〜っと、皆待ってたんだよ」
「そーそー。特に圭ちゃんなんかね」
え?矢口、いきなり何を・・?
「・・・何であたしが出て来るのよ?」
「だって圭ちゃん、MUSIX!で一緒になった時、紗耶香に会える〜〜ってはしゃいでたと思うんだけどな〜〜」
「そ、そうだっけ?」
いきなり、恥ずかしい事言わないでよ、全く・・。
「でもさぁ、圭織だってはしゃいでたし、なっちやごっちんも・・・それにさぁ〜・・」
お返しだ。
「な、何よぅ・・」
あ、やっぱり焦ってる。
「一番はしゃいでたのって、矢口じゃなぁ〜いぃ〜〜〜??」
「え、えぇ?そ、そうだっけ?あ、あはは。遠い昔の事は忘れたなぁ〜〜・・・・あはははは・・」
「二人とも、相変わらずだね〜、そういう所は」
紗耶香は、そう言ってクスッと笑った。
冷静なのは変わってない。いいのか悪いのか・・。
「ねぇ」
「ん〜?何?紗耶香」
「後輩、一杯増えたみたいだね」
「あはははは。矢口や圭ちゃん達合わせて十三人だからねぇ〜。もう忙しいのなんのって」
まぁ、実際、矢口の言う通り、いわゆる『大所帯』ってヤツなんだけど。
「まぁねぇ。まとめるのは大変だけど・・・それでも一緒に仕事するのは楽しいから」
「お、言うねぇ。圭ちゃん、大人になった?」
おいおい。
「あのねぇ・・あたし、今年で二十一よ?大人に決まってんでしょーが」
「あはは。そう言えばそうか」
そこまで話した時に、紗耶香のマネージャーが声を掛けて来た。
「あ、はい。今行きます」
「紗耶香、頑張ってね」
「真里っぺ、ありがと♪」
「行ってらっしゃい」
最後にそう言うと、紗耶香は背中越しに、右手を振って見せた。
「いつの間にやら……三人三様」(完)
|