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 「新生活、スタート」  正志様 執筆作品

「あれ、あの娘は‥‥確か、試験の時の‥‥」
 真希は、まだ知り合いのいない教室の中で、一人で呟いていた。

 この春から知り合いの誰もいないこの街に、引越して来て今日が高校の入学式だった。校長先生の長い話が終り、講堂から自分の教室に戻って来ると、まだ誰もがおとなしくしていた。担任の先生の自己紹介が終了し、生徒が順番に自己紹介をして行くのを、真希はぼんやり聞いていた。彼女の番が過ぎても、自己紹介は続いていた。そんな時に、聞き覚えのある声がした。あまり周囲を気に掛けない真希がハッとして顔を上げた。
「吉澤ひとみです。父親の仕事の関係で‥中学卒業と同時にこの街に、引越してきました。趣味は‥‥」
「あれ、あの娘は‥‥確か、試験の時の‥‥絶対にそうだ、間違えない」

 これからの生活を決める事件は入学試験の時に起こった。寝坊癖のある真希は、大事な試験の日も寝坊し掛けた。慌てて試験会場に掛け込むと、持ち物を確認した。筆箱に使用しているポーチを覗き込むと消しゴムが入っていなかった。途方にくれた顔をしていると、隣に座っていた少女が声を掛けて来た。
「どうかしたんですか‥‥」
「あっ、実は消しゴム忘れちゃって‥‥」
「そうなんですか、それは大変ですね。ちょっと待ってください。」
 そこまで言うと、隣の席の少女は消しゴムを、二つに切り裂いた。
「ハイ、どうぞ」
「えっ、いいんですか?」
「困った時はお互い様ですよ。気にしないで下さい。一緒に合格できるといいですね。」
「ありがとう。お互いに合格できるといいね。頑張ろうね」
 真希がそこまで言うと試験が始まった‥‥

 そんな事を思い出していると、全員の自己紹介が終っていた。休み時間になったので、真希は思い切って、席を立ちひとみの席に近づいていった。
「あのう〜吉澤さん。ちょっといいかな?」
 自分の名前を呼ばれ、ひとみは読んでいた文庫本から顔を上げた。
「あれ?あなた‥確か試験の時に隣だった‥‥」
「よかった〜覚えててくれたんだ。私、後藤真希、これからよろしくね」
「吉澤ひとみです。よろしくお願いします」
「なんて呼ぼうかな?吉澤さんじゃカタ過ぎるし、ひとみじゃ親し過ぎるしなぁ〜そうだ!よっすぃーって呼んでいいかな?」
「よっすぃー?まぁ、いいか。じゃあ、私はどうしようかな〜これがいいや、あなたはごっちんで決まりね」
「ごっ、ごっちん?初めてそんな呼ばれ方したな。面白いな、それって、以外と私達ってセンス似てるかもね。上手くやって行けそうじゃん?」
「そうだね、仲良くしてね、ごっちん」
「よろしくね、よっすぃー。あっ、先生が戻って来た。じゃ、後でね。」
 自分の席に戻る真希の背中を見ながら、ひとみは真希の自己紹介を必死になって思い出しながら、こんな事を思っていた。
(ごっちんと一緒なら、毎日楽しくなりそうだな‥‥)
 真希も、同じ様に思っていた。
(よっすぃーと一緒なら、高校も毎日楽しくなりそうだな‥‥)

「新生活、スタート」(完)

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