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 「ベーグルまであとわずか(後編)」  弦崎あるい様 執筆作品

そして乗り換えを済ませたあたし達は改札を抜ける。
「さてと、行こうか。」
駅前を眺めていたあたしを保田さんは促す。
駅前は寂れていなければ、発展しているわけでもない。
でも今やっているお店はコンビニしかない。
・・・・・・普通の駅前ってところかな。
あたしはそんなことを思いながら保田さんについて行った。
駅前の商店街らしきところを抜け、住宅街へと入る。
「ここはそんなに栄えてないけど、昼になると結構賑やかなんだよ。」
「へぇ、そうなんですか。なんか、その、いい町ですね。」
あたしはなんて答えていいか分からず、ありきたりの返答しか出来ない。
保田さんはそんなこと気にしていないらしく、話を続ける。
「私はこの街好きだよ。どこなく懐かしい感じがして、それに美味しいパンも売ってるしね。」
・・・・・・パ、パン!
「あ、あの。そこってべーグルって売ってますか?」
思わず質問に力が入る。
「うん。そこはパン屋なんだけど喫茶店もやっててね、そこはべーグルも売ってると思うけど。前に雑誌に載ってたから美味しいと思うよ。」
・・・・・・美味しいべーグル!
「今度差し入れで持って行くよ。それとも明日買いに行こうか?確かあの店結構早くからやってるから。」
保田さんは楽しそうに笑う。
「え?いいんですか?」
とあたしは思わず身を乗り出してしまう。
「だってべーグルって聞いたら、よっすぃ〜がすごく食べたそうな顔するんだもん。」
保田さんは優しく笑う。
だだをこねる子どもに優しくなだめるお姉さんのように。
・・・・・・ちょっと大人気なかったかな。
あたしは少し反省する。
「さてと、着いたよ。」
見るとそこにはまだ建てて新しいマンションがある。
「さっ、入ろう。」
とあたし達はマンションに向かった。
入口はオートロックなので、保田さんが暗証番号を入力するとゆっくりと開いた。
ここの5階だということであたし達はエレベーターに乗って5階まで行くことにした。
「今ドア開けるから。」
そう言って保田さんはバッグから鍵を取り出す。
ドアを開けると目の前には玄関と小さな廊下が広がっていた。
そして初めに目についたのが大きな2つのゴミ袋。
「あ、ゴメン。今日出すの忘れちゃってさ。今片付けるから。」
あたしはゴミ袋に手を伸ばす保田さんの手を制して言った。
「いいですよ。ゴミくらい出して来ますから。保田さんは休んでて下さい。」
「じゃぁ、ドアの前に置いといていいから。今日出してもしょうが・・・・・・・。」
保田さんは言い終わる前に膝から崩れ落ちる。
「保田さん!」
あたしはすぐさましゃがんで保田さんの顔色を伺う。
「大丈夫ですか?」
「う、うん。平気。ちょっと目眩がしただけだから。」
保田さんは笑っていた。
その笑みが、あたしには痛々しかった。
「無理しないでいいですから・・・・・。辛いならそう言って下さい!無理して・・・
元気に振る舞う必要ないですから・・・・・。」
あたしは唇を噛み締める。
自分がすごく情けなかった。
保田さんを介抱したいって思ってるのに、逆に保田さんに無理させて辛くしてる。
そんな自分が本当に情けなかった。
そっと頭に手が置かれる。
「気にしなくていいよ。私はよっすぃ〜が来てくれて助かってるんだから。本当に嬉しいんだよ。よっすぃ〜がいなかったらとっくにどこかで倒れてたと思うもん。元気に振る舞えるのはよっすぃ〜といて楽しいからだよ。」
保田さんは優しくあたしの頭を撫でてくれた。
しばらくの沈黙が流れた。
「あたし、ゴミ出して来ますね。」
そう言ってあたしは立ち上がるとゴミ袋を持って外に出た。
そして玄関に戻ると、保田さんは立ってにこやかな顔をして言った。
「お帰りなさいあなた。ご飯にします?お風呂にします?」
「・・・・・・・それよりも、君を頂くよ。」
とあたしはニヤリと笑う。
一瞬の沈黙の後、二人で大声で笑った。
その後あたし達はリビングに向かい、くつろいでいた。
「なんか食べよっか。」
と保田さんは立ち上がろうとする。
が、あたしはその前に立ち上がる。
「保田さんは休んでて下さい。簡単ならものなら作れますからあたしが作りますよ。」
そう言ってキッチンのところに行く。
「チンすればできる冷凍あんかけソバがあるから。」
保田さんはキッチンを覗き込むようにして言った。
あたしが冷凍庫を開けてみると、確かに冷凍のあんかけソバがあった。それも5つも。
「この頃それにハマっててさ。だから常時食べれるように買い溜めしてあるの。」
・・・・・・そんなにおいしいのかな。
あたしはまじまじと冷凍あんかけソバを眺めた。
そして袋開けてチンする。
「あの、お箸とかってどこにあるんですか?」
「中にプラスチックのフォークが入ってるでしょ?」
保田さんに言われて中を覗くと、確かにプラスチック製のフォークが入っていた。
そして、小さいテーブルに美味しそうに湯気を立てているあんかけソバが並ぶ。
「じゃ、いただきます。」
と二人でずるずるとソバを食べる。
食べ終わって時計を見ると、もう12時近かった。
「そろそろ寝ようか。」
食べ終わって一息ついたところで保田さんがそう切り出した。
「でもどうやって寝るかだな。さすがにお客さんにソファーで寝てもらうってわけにはいかないし。まぁ、いちよソファーベットなんだけど。」
保田さんは考え込んでいる
「あたしは別にいいですよ。保田さんこそ病人なんですからベットで寝て下さい。」
「そういうわけにもいかないよ。う〜ん・・・・・・・・一緒に寝ようか?」
・・・・・・えっ?
「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!それはちょっと・・・。」
いきなりの事にあたしは戸惑う。
「冗談だよ。でも、そんなに驚かなくてもいいんじゃない?」
「す、すいません。」
とあたしは頭を下げる。
「いいよ、気にしてないから。それじゃ私のベットにソファーをくっつけるってのは
どう?せっかく来てもらったのに寝るとこ別っていうのも悲しいししね。」
冗談を言う保田さんは本当に楽しそうだった。
でも寝てしまうと、特に話すこともなくあたし達は寝てしまった。
・・・・・・まぁ調子悪い保田さんに長話させるのも悪いし。

それであたしは保田さんの家に泊まることになり、朝を迎えた理由。
どうやら保田さんはベットから落ちて、そのまま寝てしまったらしい。
はぁ〜。
あたしはため息をつく。
あたしは保田さんの寝顔を見て思う
・・・・・・保田さんって不思議な人だなぁ。真面目かと思うと冗談言うし、大人かと思うと子どもみたいだし。本当に不思議な人。まぁ今回の事で色々と保田さんの事が分かったし。まぁ、よかったのかな。
「う、う〜ん。・・・・ん?よっすぃ〜?・・・・・えっ?・・・・えぇぇぇぇぇぇぇ!
なんでよっすぃ〜が家にいるのぉ!・・・・・・私なんかした?」
はぁ〜。
あたしはまたため息をついた。
「何もしてません。昨日のこと覚えてないんですか?」
「え?昨日?えっと・・・・・・あっ!風邪ひいたからってよっすぃ〜が送ってくれたんだった。すっかり忘れてた。あはは。」
保田さんは笑って誤魔化そうとする。
そしていきなり素頓狂な声を上げる。
「どうしたんですか?」
「今7時40分なんだけど・・・・・・。」
「確か・・・・・8時にスタジオ入りでしたよね?」
「遅刻だぁぁぁぁぁぁ!」
あたし達は見事にハモって頭を抱えた。
服を着替える時間がないので、とりあいず髪だけ整えて家を飛び出した。
「う〜ん。これはちょっと厳しいね。」
保田さんは時計を見て難しい顔をする。
どうやら風邪は良くなったようだ。
そして角を曲がろうとする。
「え?駅ってまっすぐじゃなかったですか?」
・・・・・・一本道だと思ったんだけどなぁ。
「駅はまっすくでも、パン屋この角曲がった方が近いから。」
保田さんはにっこりと笑って言った。
「そんなパン屋なんて行ってる場合じゃないですよ!」
あたしは焦って言った。
「だって約束したでしょ?」
と保田に言われてハッとする。
・・・・・・昨日の朝べーグル買いに行こうっていうのを覚えてだんだ。
「行こうよ。だって食べたいてしょ?」
そう言われるとNOとは言えない。
「はい!」
あたしは笑顔で頷く。
こうしてあたし達はべーグルを目指して走り出した。
なんとか収録に間に合ったものの、ギリギリだったのであたし達はかなり怒られた。
でも、保田さんの買ってくれたべーグルはとても美味しかった。

後日談
で、メンバーにかなりからかわれた。
遅いのでマネージャーがあたしの家に電話したところ保田さんの家にいると言い、なぜかそのことがメンバーに伝わってしまったのだ。
まぁ、服も昨日のままだったし。
しょうがないのかな。
はぁ〜。

「ベーグルまであとわずか」(後編 完)

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 2001年2月7日から、のべ人の方に閲覧していただきました。ありがとうございます。

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