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「何て呼ばれる? 何て呼ぶ?」

「後藤 だから、そこはこうでしょ
「はい ごめんなさい……市井さん」
 前から後藤の教育係だった私は、圭ちゃん、後藤と3人で新しいユニット「プッチモニ」を結成して、ますます後藤と一緒の時間が増えた。
 きょうも「ちょこっとLOVE」のダンスレッスンなんだけど……後藤が1人遅れてる。
 どうしても、後藤1人が微妙にズレてしまう。
 それは後藤自身にもわかっていて、だから、余計に焦って間違えたりする。

 それにしても……後藤は相変わらず私のことを「市井さん」って呼ぶ。
 ほかのみんなのことは、「裕ちゃん」とか「圭ちゃん」って呼ぶようになったのに……。教育係だからって、変に気を遣ってるのかな?
 ま、「『裕ちゃん』って呼んでえぇんやで?」とか言って、みんなの方から歩み寄ってあげたみたいだけど……私はそれはしないことにした。
 後藤から言ってくるまで、私からは何も言わない。
 だって、後藤には自分で自分の場所を勝ち取って欲しいと思ったから。

 私自身が追加メンバーに選ばれたときの経験から言っても、メンバーの呼び方って、そのまま〈娘。〉の中で勝ち取った自分の場所の広さのことだ。
 最初、私は、最年少の明日香に対しても「福田さん」と呼んでいた。
 そのときは、立っているのがやっとの場所しかなくて、毎日、息が詰まりそうだった。
 それが、ホテルで同室になったときに、思い切って、
「…『明日香』って…呼んでいい?」
って踏み込んでから変わっていった。
「いいよ。私も『紗耶香』って呼んでいい?」
 そう言った明日香の返事。今でも忘れない。
 私にとって、本当の意味で〈娘。〉のメンバーになれた瞬間だったから。

「よし、次できょうは最後ね」
「後藤、もうちょっとだから頑張んだよ?」
「はい」
 かなりへばってる様子の後藤。
 声を掛けてやると、何とか呼吸を整えた。
 ――ダンダダ ダンダダ……曲が始まると、後藤の動きはかなりよかった。
 最後と聞いて気合いが入ったかな? とか思っている間に、後藤はしっかり踊りきってみせた。
 後藤の集中力は大したもんだ。
「どうでした?」
 私に尋ねる後藤の表情にも自信が見える。
「ん、今のはよかったんじゃない?」
「ホントですか? わ〜い!!
 自分で拍手をしながら無邪気に喜んでいる。
「ありがとう、『市井ちゃん』!!
 後藤が突然、私に抱きついてきたから、よろめいてしまった。
 ん? 「市井ちゃん」?
 お〜い、どさくさ紛れかよぉ……私はあんなに苦労したのに……。
 ま、いっか――後藤なりに頑張ってるしね。
「頑張ったね。頑張ったけど…苦しいから離れてよ、『ごっちん』
 一瞬、後藤の目が大きくなったが、すぐにクシャクシャッと笑う。
 ……ホント、かわいいんだよなぁ。

 ふと見ると、圭ちゃんがニヤニヤ笑ってた。
「何ぃ?」
「何だかさぁ…紗耶香も親バカだなぁ…って思ってさ」
「はぁ〜?
 親バカって…どういうことよ? まったく……私は厳しい教育係だってぇの。
 私がふくれても、圭ちゃんは笑ったまま、
「ほらほら、『かあさん』、後藤が呼んでるよ?」
 指さす方を見ると、後藤がおっきなタオルを抱えてバタバタと走ってきていた。
 あぁ見えて、後藤は結構気がつくところがあるんだよねぇ…って、こういうとこが親バカ?

「何て呼ばれる? 何て呼ぶ?」(完)

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