「大きなランドセル背負って」
移動中の車の中、ふと見ると、紺野が窓の外をジ〜ッと見つめてた。
「どうしたの、紺野?」
紺野は、ゆっくり振り向いてニコッと笑った。
「…新1年生です」
その言葉に、なっちも外を覗くと、大きなランドセルを背負った小さな子どもたちが信号待ちをしてた。
まるで、ランドセルが歩いてるみたいだった。
「可愛いねぇ」
「はい…」
しばらく2人で一緒に見てた。
「……まるで私たちみたいです」
ポツッと紺野。
「私たち?」
「はい…5期メンバーの4人と一緒です」
紺野は、子どもたちを見つめたまま。
「ランドセルって、6年間使うからって、大きなのを買うじゃないですか。1年生には大き過ぎるのに……」
そう言う紺野は、ちょっと不安げな目をしてる。
「私たちも、期待の方が大き過ぎて、それに見合うだけの実力がなくて……」
紺野は、それ以上何も言わなかった。
「……でもさぁ、紺野」
不安げな目のまま、私の方に向き直る。
「1年生は、次に2年生になって、3年生になって、ちゃんと6年生になるんだよ。そのうちにランドセルが似合うようになって、今度はランドセルが小さく感じられたり、ね?」
だから……。
「紺野たちも、ちゃんとランドセルが似合うようになるよ。今だって『頑張ってるなぁ!』って、なっち、思うもん」
紺野は、ゆっくりゆっくり考えて、ニコッて笑った。
「…はい!」
そのとき信号が青に変わって、大きなランドセルを背負った小さな1年生たちが歩き出した。
重そうにしながら、でも、一歩一歩確かに進んでいった。
「大きなランドセル背負って」(完)
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