「A Happy New Birthday!」
年の瀬。
大晦日。
新年を前にして、ただでさえ気忙しいこの日に、私は生まれた。
だからって訳じゃないけど、小さな頃から私は出来るだけ他人に迷惑をかけないように気を遣う子だった。
親が喜ぶことが私の喜び。
学校の先生に褒められれば有頂天。
いつも大人の顔色を見て、大人が望む「良い子」を演じてた。
家庭の事情で別々に暮らすようになっても、両親を困らせたくなかったから、何も言わずに我慢した。
そんな私が唯一自由になれたのが、歌っているときだった。
歌いたい歌に自分の思いを重ねて、思いっきり歌う。
悲しいときにも元気になれて……。
嬉しいときには喜びがはじけた。
いつでも歌が友達で、だから、ずっとずっと歌っていたくて……初めてのワガママがオーディションを受けることだった。
受かりはしなかったけど、世の中には、私みたいに歌が好きな子達がこんなにいるんだって、驚いて、なぜだか嬉しくなった。
もう1度受けて、また落ちて……。
そして娘。達にめぐり会った。
みんな純粋に歌が好きで、「私もここにいていいんだ」って、「本当にいていいのかな?」って、涙が出そうだった。
同期の圭ちゃんから歌への思いを努力に変えることを教えられて、矢口からは弾けるようなパワーを感じた。
他人にも自分にも厳しい裕ちゃん、やると決めたらすごい瞬発力の彩っぺ。
もう生まれながらの可憐な少女・なっち、とにかくその存在感に圧倒された明日香。
いつでも交信中だけど、それくらい純粋な圭織。
「私も負けたくない」ってガムシャラに頑張って、頑張って……。
いつの間にか、後藤の教育係になって、石川、吉澤、加護、辻の4人も加入してきた。
私はまた気を遣う側で……「このままでいいのかな?」って、「もう1度、ワガママ言っても良いんじゃない?」って。
出来るかどうかじゃなくて、とにかくチャレンジしてみたかった。
脱退、シンガーソングライターを目指して……。
周りに迷惑をかけて、自分も悩んで……ポッカリ空いた時間をふんだんに使って、ジタバタあがいてみた。
季節がうつろうってこと。
無心に何かに取り組むことの楽しさ。
物を作り出すことの難しさ。
いろんなことが分かったけど、一番感じたのは、「やっぱり歌っていたい!」っていうこと。
だから……。
「帰ってきたよ!」
娘。時代ほどではないにしても、また怒涛の時間の中で迎える大晦日。
新しくなった私の、新しい誕生日。
A Happy New Birthday!
「A Happy New Birthday!」(完)
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