「足して2で割って8月9日」
8月8日=かおりの誕生日。
8月10日=なっちの誕生日。
足して2で割って、きょう8月9日は2人の誕生パーティーでにぎわってる。
「圭坊、飲んでるかぁ?」
……裕ちゃんはグラス片手に、すでにご機嫌。もちろんグラスの中身はビール。
「なっちぃ〜! なっち、かわいぃなぁ……ホラッ! 一緒に飲も!」
「ダ〜メッ!」
裕ちゃんの差し出すグラスに、首を振るなっち。
「なっちが20歳になるの、明日だもん」
って、ほっぺをプクッてふくらませて……。
なっち……ちょっとすねてる?
「1日ぐらい、えぇやん。ホンマ、相変わらず変なとこでカタイんやから……おっ、かおり! かおりはもう飲めるなぁ。飲もっ!」
今度は、かおりにグラスを差し出す。
「えぇ〜……かおりもいいや。なっちに悪いし」
「何でぇ? かおりは飲めばいいっしょ。飲みなよ……なっちは飲めないけどさ……」
なっち……やっぱりすねてる?
「じゃ、やっぱりかおりも飲まない。きょうは、なっちとかおり2人のパーティーだから、2人で楽しめることしかしないの。かおり、決めたもん」
「何でさ! かおりは飲んでもいいんだから、飲めばいいっしょ!」
裕ちゃんなんかそっちのけで言い合いになりそうな2人。
ここはサブ・リーダーの出番でしょ。
「まぁまぁ、2人とも落ち着いて。パーティーなんだからさぁ、ケンカはなし!」
「うん……」
「…でもさぁ……」
まだ納得いかなげな2人。
「…じゃぁさぁ、こうしよう。このお圭さんが明日、2人を飲みに連れていってあげる。ね?」
これで万事解決!……と思ったんだけど。
「圭坊、100年早い」
…姐(あね)さん登場……。
「2人を飲みに連れていくのは、この中澤さんを除いてほかにおらへんやろ。圭坊もひっくるめて面倒みようやないか!……ま、可哀想やから、みっちゃんも呼んだげようかな」
裕ちゃん、みっちゃんも後ろにいるんだよ……。笑顔が引きつってるし。
「あたしは“おまけ”かい!」
ツッコミを入れたところまでは勢いがあったんだけどね。
「あっそう。平家さんは一緒に行きたくないとおっしゃる。ま、無理にお誘いはしませんけど」
余裕でかわされて、
「あ、いや…姉さん、意地悪せんといてくださいよ〜」
なんて言っちゃうのは、まぁ、みっちゃんの人の良さかな。
なっちとかおりは、ことの成り行きに、「これで良かったのかな?」って不安がってるみたい。
ま、飲みすぎ…って言うか、飲まされすぎにさえ注意してれば、楽しいお酒を教えてもらえるよ。うん。
「明日が楽しみやなぁ……ま、きょうはみっちゃん相手で我慢しよか」
「我慢って……ひどいなぁ」
「あはははは……みっちゃん、飲みが足らんのと違う?」
飲みながら騒いでるあの中に、なっちとかおりが入ってるのは、ちょっと想像できないけど……。
2人がどんなお酒なのか、私もちょっと明日が楽しみだなぁ。
なんやかんやで、主役の2人とは関係なく、パーティーは盛り上がってた。
「みっちゃん、グッといき、グッと……あれ? ビールもうないの? ビールもう5本追加ぁ!」
…裕ちゃん、盛り上がりすぎだよ……。
「足して2で割って8月9日」(完)
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